複製しただけで著作権法違反

旺文社で著作権法違反

入試の過去問でお世話になった方も多いと思います。私もお世話になりました。その旺文社が、入試の過去問をPDF保存していたことがわかり、データ破棄したと発表しました。旺文社は著作権そのもので商いをしている会社ですが、実は、一般企業にとっても重要な論点を含んでいると思いましたので、とりあげてみました。

<旺文社のプレス発表はこちら>
https://www.obunsha.co.jp/news/detail/425

発表によると、旺文社は各大学からその年の入試問題の提供を受けていました。紙に印刷された試験問題です。その際に、「紙の書籍、電子辞書・電子書籍、入試データの蓄積、公衆送信による通信指導」に利用する旨を説明して受領していました。

しかし、入試データの蓄積をするにあたり、経年劣化もあるためPDF化して保存するようにしたところ、この行為が、著作権法違反になる恐れがあるため破棄したというものです。PDF化というのはデジタル化ということですが、二つの論点から考えてみたいと思います。

何が違反だったのか?

複製するだけでだめ

ポイントは、
PDF化です。旺文社は、実際にデータを書籍などに利用する際には、著作者である学校の許諾をとっています。ただ単にPDFにしただけでは、学校側に損害が発生したとは考えにいくいので、問題を提供した学校の権利を侵害したとは思えません。ですから、ここで問題になるのは、紙をスキャニングして
PDFを作った行為自体です。

二次的著作物の可能性

オリジナルを改変して作られた別の作品を二次的著作物と呼びます。小説をテレビドラマ化したり、マンガからアニメを作ったりした場合があてはまります。今回のケースに近い例ででいえば、写真のデジタル化などが二次的著作物にあたります。


そうすると、紙で保存していた問題集をPDFというデジタル媒体に置き換えた時点で、二次的著作物にあたる可能性もあります。


二次的著作物を作成する権利、作成させない権利については、単に著作権譲渡をしただけでは、移転をしません。もし、そこが契約に盛り込まれていなければ、著作権法に抵触する可能性があります。

(翻訳権、翻案権等)

第二十七条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。


(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)

第二十八条  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

著作権法上の複製権

今回のデジタル化を広義の複製と考えた場合はどうでしょう。複製権または複製したものを頒布する権利は、著作者が
専有しています。つまり、他の人には複製する権利はありません。

(複製権)

第二十一条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

(頒布権)

第二十六条  著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。

2  著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。




私的利用という制限規定

ただし、制限規定という規定があり、私的使用に限って、一定の制限下でのコピーを認めています。

その昔、自分が買ったレコードから好きな曲だけをカセット・テープにコピーをするなどして楽しんだ方は多いと思います。また趣味でピアノを弾く方が、楽譜をコピーをして譜めくりをしなくて良いようにして使うなど、あくまで個人、もしくは家庭内の範囲における利用に限り認められています。

ちなみに、いわゆるプロテクトがかかっているDVDをはずしてファイルに取り込む行為は、私的利用であっても違法です。(著作権法30条2)

つまりデータを保存するというだけの目的であったとしても、企業がおこなった時点で著作権法に触れる可能性がります。

(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。




どんな損害が発生したのか

実は、今回、損害は誰にも発生していないと思われます。旺文社は利用に関する許諾は得ていて、単に経年劣化への対応として複製しただけです。もともとが購入したものでもありませんし、複製をしたからといって、オリジナルが売れなくなるものでもありません。

また著作権というのは親告罪、つまり誰かが訴えなければ、罪に問われないのです。今回に関していえば、複製をするだけでは、誰も被害を被らないと思われます。損害がありませんから、訴えの利益がなく、親告罪も成立しない可能性がたかいです。

しかしそれでも、旺文社がこのような発表をしたのは、著作権という権利をもとにビジネスをしている出版社だからこそであったと思われます。

一般企業でもおこっている著作権法違反

著作権に関して認識の高い出版社であったため、このように少々大げさな発表がされましたが、多くの一般企業においては、たぶんここまでの認識はもっていないと思います。

何年もまえにカメラマンに依頼した古い写真をデジタル保存すると二次的著作物になります。カメラマンと二次的著作物にかかわる権利が譲渡されているかどうかの確認をする必要があります。

例えば社内で情報共有をするため、新聞記事をコピーして回覧する、ホームページを印刷して回覧するのも、複製権の侵害に該当します。

厳密にいうと、忘年会のため、食べログの紹介ページを印刷して配布するのも、個人、家庭の範囲を超えますから違法になりえます。

知らず知らずのうちに人の権利を奪っていることもありますから、コンプライアンスを遵守すべき企業としては、著作権にも気を配りたいところです。

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